New 不良債権処理における「債務者」の税務 Ⅰ事業再生の税務
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講師:税理士 小松誠志
不良債権処理(債務者である法人の立場から見れば、事業再生又は清算・廃業等の局面に当たります。)の一環として債務免除が行われる場合、債務者である法人においては、債務免除益が生ずることになります。債務免除益は、基本的に益金算入されることになり、その益金に見合う損金又は繰越欠損金がなければ、その債務免除益に対する課税が生じることになります。窮境に陥っているために債権者から債務免除を受けたにもかかわらず、その債務免除益による課税が生じて資金が流出するようでは、その窮境を脱することは困難です。また、清算の過程で債務免除を受けた場合でも、債務免除益による課税が生じてしまうと、その清算手続に支障を来すことになってしまいます。
したがって、不良債権処理が行われる場合、債務者である法人においては、債務免除益に対する課税が生じないことを確実にすることが重要となります。そのためには、資産の含み損を損金算入するための資産の評価損益の規定及び設立当初からの欠損金を含む繰越欠損金の規定の理解が必要となります。また、債務者である法人の代表者等がその保証人となっている場合には、債務者である法人の不良債権処理と併せてその保証債務の処理も必要となり、これに関する規定の理解も必要となります。
本セミナーでは、不良債権処理における債務者の税務の重要論点について、税理士等の実務家向けに解説します。
◆収録内容・チャプター
Chapter1(46:26)
I 事業再生の税務
1 法的整理手続(民事再生)における税務
(1) 債務免除益等の計上と債務免除益等課税への対応
・債務免除益等による課税が生じないようにできるか否かが重要
(2) 民事再生の場合の資産の評価損
イ 資産の評価損の損金算入
・民事再生の場面では資産の含み損を評価損として損金算入するという特例が設けられている。
・民事再生の適用を受けている債務者会社にとって、(イ)法的整理の事実があった場合の資産の評価損と(ロ)再生計画認可の決定があった場合の資産の評価損益のどちらがいいのか、もしくはどちらが適用可能なのかを確認する。
(イ)法的整理の事実があった場合の資産の評価損
・場面は民事再生法の再生手続開始の決定の時。
・資産の範囲は法令では限定なし、ただし、通達で金銭債権を対象外としている。
・税務上の時価は継続価値、民事再生法の時価は清算価値で両者の概念は異なる。
(ロ)再生計画認可の決定があった場合の資産の評価損益
・場面は再生計画認可決定の時。
・法人税法独自の制度。申告調整により損金算入・益金算入。
・評価損益の対象となる資産の範囲は一定のものは除かれるが金銭債権は含まれる。金銭債権であっても評価損を計上することができる。
Chapter2(11:32)
(3) 青色欠損金の損金算入(青色欠損金の繰越控除)
イ 概要 ロ 控除限度額の制限措置
ハ 中小法人等の特例
〇大法人による完全支配関係がある場合の例
〇複数の完全支配関係がある大法人に発行済株式等の全部を保有されている場合の例
※完全支配関係のない複数の大法人により支配されている法人の例
ニ 法的整理手続等の場合の特例
・事業再生等特有の話。青色欠損金の繰越控除の控除限度額の制限措置が適用されない場合。
・“卒業要件”(上場を果たす、弁済期間満了、弁済すべきものがすべてなくなるなど)に該当すると特例は適用されない。
Chapter3(29:37)
(4) 設立当初からの欠損金の損金算入
イ 設立当初からの欠損金を利用できる一定の場合
・再生計画認可の決定時に資産評定をして評価損益を計上したかどうかによって青色欠損金を先に使うのか、期限切れ欠損金を先に使うのかが違ってくる。
ロ 損金算入限度額
(イ)上記イ③に該当しない場合
(ロ)上記イ③に該当する場合
・法人税法上の「減算」は計算結果がマイナスとなる場合はその結果を反映させるということ。似て非なる言葉で「控除」がある。「控除」は引いてマイナスになる場合は0に止める。
ハ 設立当初からの欠損金の損金算入額(利用額)の内訳
(イ)評価損益の計上がない場合(上記イ③に該当しない場合)
(ロ)評価損益の計上がある場合(上記イ③に該当する場合)
〇設立当初からの欠損金の損金算入額(使用額)の内訳がわかる図
①評価損益の計上無(青色欠損金の繰越控除に対して劣後)
②評価損益の計上有(青色欠損金の繰越控除に対して優先)
Chapter4(23:56)
ニ 設例
(イ)評価損益の計上がない場合 (ロ)評価損益の計上がある場合
(5) 資産の評価損益と欠損金の使用のまとめ
・「再生計画認可の決定があった場合の資産の評価損益の計上がない場合」はテキストp2(イ)法的整理の事実があった場合の資産の評価損の適用を受けている場合か、もしくはp2(2)全体の適用がない場合、つまり(イ)法的整理の事実があった場合の資産の評価損の規定と(ロ)再生計画認可の決定があった場合の資産の評価損益の規定の両方の適用がない場合、これは評価損を全く計上しない場合、が該当する。
Chapter5(09:57)
(6) DES(デット・エクイティ・スワップ)
イ 債権者の取扱い
ロ 債務者の取扱い
(イ)法人税法の取扱い
(ロ)DESの地方税への影響
a 法人住民税の均等割額 b 法人事業税の外形標準課税
ハ 設例
Chapter6(25:34)
2 私的整理の場合
・どのような私的整理が資産の評価損益の制度、設立当初からの欠損金の損金算入制度の対象になるのか。
(1) 資産の評価損の損金算入
イ 再生計画認可の決定に準ずる事実があった場合の資産の評価損益
ロ 再生計画認可の決定に準ずる事実
〇[再生計画認可の決定に準ずる事実(①~④又は①~③&⑤を満たすもの)]を要約した表
ハ 再生計画認可の決定に準ずる事実の具体例
・再生計画認可の決定に準ずる事実の評価損益の規定が使える5つの手続
Chapter7(16:32)
(2) 青色欠損金の損金算入(青色欠損金の繰越控除)
・私的整理の場合でも一定の合理的な場合には、法的整理と同じように50%の制限は解除される。
(3) 設立当初からの欠損金の損金算入
・私的整理ガイドラインとか中小企業再生支援協議会等が絡めば、評価損益を計上するかどうかにかかわらず、設立当初からの欠損金の損金算入制度は使える。
・特定調停スキームは中小企業再生支援スキームの対象よりもさらに小規模な企業の事業再生を主に対象としている。
〇〈税務上の観点に基づく私的整理手続の分類〉……税理士泣かせの複雑な適用関係が一目でわかる表
・私的整理手続きを次の3つに分類。
①「再生計画認可の決定に準する事実」に該当するもの
②①以外の「再生手続開始の決定に準ずる事実」に該当するもの
③①、②以外のもの
・この分類ごとの資産の評価損益制度と設立当初からの欠損金の損金算入制度の適用関係が一目でわかる表
Chapter8(21:32)
3 経営者・保証人の問題
(1) 保証債務を履行するための譲渡の特例
イ 内容
・保証債務の履行とその求償権の行使不能が起こりうる状況を示した図。
・所得税法64条2項→問題となるのは「求償権の全部又は一部を行使できない」場合はどのような場合かということ。
ロ 求償権行使不能の判定
ハ 事例研究
(イ) 事例の概要 (ロ) 国税庁の対応
(2) 債務処理計画に基づき資産を贈与した場合の課税の特例
(3) 経営者保証に関するガイドライン
イ 経緯
ロ ガイドラインによる場合の税務上の取扱い
・ガイドラインに則って行う場合には、保証人及び対象債権者ともに課税関係は生じない。
◎「不良債権処理の税務」トータル解説講座
○PART1 基礎・事例編
▶事例で学ぶ貸倒損失をめぐる税務処理30選
講師:税理士 中村慈美 氏
☆貸倒処理に当たって留意すべき事項を事例形式で解説
☆貸倒損失の税務の基礎+様々な状況下での貸倒れの税務詳細
○PART2 実務編
▶貸倒損失・債権譲渡の税務処理の実務① 法人税基本通達9-6-1について
☆9-6-1金銭債権の全部又は一部の切捨てをした場合の貸倒れの詳細
▶貸倒損失・債権譲渡の税務処理の実務② 法人税基本通達9-6-2、3及び債権譲渡等の取扱い
☆9-6-2事実上の貸倒れ、9-6-3売掛債権の貸倒特例の詳細
講師:税理士 中村慈美 氏
今回 ☛ ○PART3 不良債権処理における「債務者」の税務
▶Ⅰ 事業再生の税務
☆法的整理、民事再生における債務免除益等課税対策
☆どのような私的整理が資産の評価損益の制度、設立当初からの欠損金の損金算入制度の対象となるのか
▶Ⅱ 第二会社方式の税務
☆粉飾をしている場合の設立当初からの欠損金の考え方と対応策
☆分割における完全支配関係継続要件、分割型分割の場合の例外
講師:税理士 小松誠志 氏